2023-07-16女性委員会
令和5年5月12日にウインクあいち 建築総合展の特設ステージにて、女性委員会主催の防災セミナーが行われました。
今回はコロナ感染対策も少し緩和されて、またいつもの会議室から気軽に足を運びやすい会場に代わり、
一般の方や学生と思しき幅広い層の方がより多く参加されていました。
講師は、7年前にもお招きした阪本真由美氏で、
現在は全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の理事を務めておられ、
過去の各被災地の状況とそれに伴う課題として、防災や減災に対する取り組み方を研究、発信をされています。
防災に対しての世間の意識は関心が低く、令和4年の内閣府の世論調査によりますと、
家具・家電等の固定をしている人が全体の34.5%で、残りの人は先延ばしになっているそうです。
命や怪我の危険性があるにも関わらず、“リスク挑戦型”のタイプの人が多く、
災害に対する危機感のなさに難しさを感じました。
また、日本国内の災害時の現状は、避難所運営が民間が主体となっていることから、
自主的に行わないとやっていけない社会構造となっていることや、
主に避難所となる学校の体育館が生活するために造られていないため、
仕組み自体にそもそも無理があるのだそうです。
つまり、自分たちがしっかりとした体制を整え、運営を考えていかなければ
ストレスだらけの不便で居心地の悪い環境になってしまうということになります。
プライバシーの確保が難しい避難所や窮屈な車中での避難生活は、
心身のストレスが積み重なって疲労で病んだり、高齢者の中には「精神的ショック」から動こうとせず、
本当に体が動かなくなってしまったりするのだそうです。
日常でも過度のストレスやショックを感じる事はきっと誰にでもあるかと思います。
しかし、そんな状態が長く続く避難所生活。経験したことのない想定外の極度の疲労は、
心身が持たないのかもしれません。 車中泊の約3割が発症すると言われている「エコノミークラス症候群」などの
“災害関連死”の数が(被災場所や気候にも左右されると思いますが)、
決して少なくないという事実にもとても驚きました。
阪本氏は、地域に合った防災システムを構築し、体制自体をより良くするべきだと提言しています。
減災へつなげるためには、防災リーダーの育成と、多様な人が防災活動へ取り組むこと。
町内会の男性だけに限らず、子ども会やPTA等の元々ある地域のネットワーク、
障害のある人や介護をしている人、様々な職種の人を含めて、
ひとりひとりがやる気を持って参画することが大切だと言います。
女性の声を活かす避難所運営や日頃のコミュニケーションが良い地域は、
ストレスの減少につながり上手くいっているという事例もあるそうです。
また避難所では、目に見えない悩み、特に人間関係に関わる心の問題も非常に顕著になるようです。
建築に関わる私たちに日頃から出来ることがあるとするのなら、
建築士としての経験、智恵や工夫の提案をすること。 減災につながるよう人に寄り添う心を大切にし、
良い影響を与える環境づくりをしていくことだと思います。