
(撮影:ToLoLo studio)
名古屋市名東区極楽。都市の利便性と豊かな住環境が共存するこの地に建つ『極楽の家』は、一級建築士で工事検査のプロである建主(妻)から 終の住処として、設計を託された職住一体のプロジェクトである。建主夫妻が求めたのは、奇をてらったデザインではなく、物理的・数値的に裏付けられた「確かな性能」と、メンテナンスを見据えた「永続性」であった。本計画は、その想いに多くの技術者や職人が応え、住まいの本質を追求した協働の記録である。
【BIMとシミュレーションによる可視化】 設計プロセスにおいて最も重視したのは、経験や勘に頼らない、工学的根拠に基づく環境設計である。初期段階からBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入し、各要素をシミュレーションした。 「なぜそこに窓があるのか」「なぜその軒の深さなのか」。すべての意匠決定には、BIMによって導き出された「光・風・熱・生活動線と視線」の最適解という裏付けがある。これにより、意匠の美しさと快適性が矛盾することなく、高い次元で統合されている。
【空間構成:素直さと広がり】 プランニングにおいては、廊下などの移動空間を極限まで削ぎ落とし、吹抜けを介してウッドデッキ、LDK、ワークスペース、個室が緩やかに繋がる構成とした。視線が垂直・水平方向に抜けることで、床面積の数値以上の「広がり」と「家族の気配」を生み出している。また外部空間を工作物で作り込まず、暮らし手の日常のガーデニングで より良い意匠になる余白を設けた。
【呼吸する断熱材「セルローズファイバー」と構造性能】 建物を包む断熱材には、新聞古紙をリサイクルした木質繊維「セルローズファイバー」を採用した。これは単なる断熱性能(Ua値)の確保にとどまらず、優れた調湿性能と防音性能、そして防虫効果を併せ持つ。壁体内で結露を防ぎ、構造躯体を長く健全に保つこの素材は、社会的ストックとしての住宅の寿命を延ばすための必然の選択であった。もちろん、耐震等級は最高等級3を確保し、災害時の安全性も担保している。
【維持管理を見据えた設備と素材】 「美しさ」と同時に、将来の維持管理のリスクを減らすことも重要視した。換気システムには、ダクト汚染のリスクがなく、清掃が容易な「ダクトレス熱交換換気」を採用。内装には、通気性と耐久性に優れ、塗り重ねによる補修が可能な「フリース壁紙」や自然素材を選定した。これらは、日々の暮らしの空気を清浄に保つだけでなく、将来的な修繕コストを抑制し、住まい手が愛着を持って手入れを続けられる仕組みでもある。
【結び】 『極楽の家』は、奇抜な表現を排し、家事のしやすさなど住まいに求められる機能と性能を実直に積み上げた先に現れたデザインである。それは、一時の流行に左右されない強さを持ち、住まう人の人生と街の風景に、静かに、そして長く寄り添い続ける。
所 在 地:名古屋市名東区
設 計 者:近藤万記子(ホームデコール設計事務所(合))
工事施工者:(有)マルヨ
建 物 用 途:専用住宅
構造・階数:木造・地上2階
建 築 面 積:104.54㎡
延べ床面積:124.41㎡
竣 工:2025年3月

ホームデコール設計事務所(合)代表 一級建築士 登録建築家
法学部出身の女性建築家(キャリア30年!年齢非公開)元住宅営業ウーマンなのです。
人生を変える家をつくろう
私は法学部出身ですが、ものづくり、空間づくりをしたくて社会人をしつつ建築を学びました。その後の出会いと仕事を通して培ったものを建築設計を通じて 皆さんの人生をよきものにできれば、幸いです。